の方向ベクトルをとおく。とは平行ではないのでのなす面の法線ベクトルをとおくと、これはとの両方に直交する直線の方向ベクトルである。このとき、との両方に直交する直線は、とを含む面ととを含む面の両方に含まれる。この2面は平行ではない(仮に平行であるとすると、は同一平面上にあり、よりとが平行となるため矛盾)。これより、との両方に直交する直線はこの2面の交線となるから高々1本であり、この交線はとの両方に直交するので示された。
東大2024年前期理系問題3
2024 東京大学 前期MathJax
(1) 略
(2)
最初からk秒後()の位置が、kが偶数のときに点Pと一致し、kが奇数のときにx軸に関して点Pと対称な点であるような点Qを考える。
規則(i), (ii)より、点Qは原点中心で点(2,1)を通る円周上にあるから、点Qを極座標表示したときの偏角だけを考えればよい。
規則(i)より、点(2, 1)を極座標で表したときの偏角をとすると点Qは最初ににいる。
規則(ii)より、ある時刻にQがにいるとき、その1秒後にQは
確率で、確率で、確率で、確率で
にいる。
これより、最初からn秒後にQが ()にいる確率はの、4で割った余りがmとなる次数の項の係数の総和に等しい。
はで割り切れるので、n秒後にQがにいる確率とにいる確率は等しい。Qと一致もしくはx軸に関して対称な位置にあるPについても同様のことが成り立つため(2)は示された。
(3)
最初からn秒後にQがにいる確率を考える。
Qは ()のいずれかにいるが、であるから、Qはにいることはない。
Qがにいる確率をとする。であり、(2)の結果より、また、であるから、となる。
点Pはnが偶数のときに点Qと一致するので、求める確率は、nが奇数のとき0、nが偶数のときとなる。
[2024/3/1 追記]
(1)の8点のうち、nの偶奇によって取りうるのは4点ずつであることを示したのち、
規則(ii)を
それぞれ「x軸」、「y軸」、「直線y=x」、「直線y=-x」と書かれた白いカード4枚とそれぞれ「x軸」、「y軸」と書かれた赤いカード2枚があり、ランダムにこのカードを引いて戻す。カードに書かれた直線に対して対称な位置に点Pが移動する
と考えると、n回の試行のうち1回でも白いカードを引いた場合、点Pが(a, b), (-b, a), (-a, -b), (b, -a)のいずれにある確率も等しいことが言える。赤いカードのみを引き続ける確率はであるから、と計算することができる。
[2024/3/17 追記]
点Pが「ある」ではなく「いる」となっているのがちょっと面白い。
日本語では有生性によって存在動詞を使い分けるが、シンハラ語でもそのような使い分けが存在する。主語の数によらず、無生物なら ඉන්නවා /tiyenavā/ となり、生物であれば ඉන්නවා /innavā/となる。*1
東大2024年前期理系問題2
2024 東京大学 前期MathJax
(1)
と置換すると、となる。
ここで、右辺は平面においてで囲まれた領域の面積である。この面積はに等しい。ただしはの範囲におけるの逆関数である。
この面積がに等しいので、である。求める実数はよりであることに注意して、を代入するとよりとなる。
(2)
AB=AC=1であるような直角二等辺三角形を考える。∠Bの二等分線とACの交点をDとする。このとき、BA:BC=DA:DCなので、となる。
(3)
とおくと、である。
の符号を考えると、最小値は、
である。
また、の符号を考えると、最大値はかである。
の範囲では、は下に凸であるからである。この両辺をについてからまで積分してが得られる。ここで、(1)の平面における面積を考えるとであるからとなる。したがって最大値は、
である。
(2)は素直に半角の公式でいいと思います。
(3)は必要なかったのでであることを用いていません。
お金って何?
以前、メルカリで「金銭と同等に扱われるもの」について書いた。
shaitan.hatenablog.com
このときは貨幣についてあまり掘り下げずに「流動性」で済ませてしまったが、今回はこれをもう少し考えてみたい。
先日、貨幣博物館を見学したが、導入展示の説明には以下のように書かれていた。
「お金」にはいくつかの特徴があります。
・さまざまなものと交換できる
・さまざまな人の間で誰でも使うことができる
・使いたい時まで貯めておくことができる
これはフォンヘーゲン(2014)*1の貨幣観を参考にしたものであり、歴史的に貨幣として使われてきたものの持つ性質――交換可能性、無名性、貯蔵可能性――に着目した説明である。*2。貨幣の起源や本質についていくつかの説が存在するが、この説明はそれらの説のいずれにも依存せずに済むという利点がある。
交換可能性
村社会における「
無名性
〈ヤップ島の石貨や貝貨は、カヌー、ブタ、ヤシ酒の購買の支払い(プルワン)、労務の謝礼(タリン)など、商品交換における貨幣に類似して、サービス、ないし品物の支払い手段としても使用されている。〉*4 しかし、これらは「貨幣」とは異なった働きをもつ。石貨はそれぞれが誰が何と交換したかの歴史をもっており、名前さえついているものがある。つまり、貨幣とは異なり、代替が不可能なものである。*5 このような性質から、「石貨」と呼ばれているものは正確には〈円盤状に加工した石製の貴重品あるいは富〉と表現すべきとされる*6。
貯蔵可能性
1985年から96年の3月までにザイール(現コンゴ民主共和国)の通貨「ザイール」は対ドルレートで実に12億分の一に下落している。ハイパーインフレは既存の貨幣の貯蔵可能性を著しく損なう。そのため通貨は受け取りを拒否され、交換手段としても使用されなくなる。その代わりに都市では米ドル札が取引に使われ、田舎では物々交換が行われた。*7
*1:Von Hagen, Jürgen, “Microfoundations of the use of money,” Von Hagen, Jürgen and Welker. Michael eds., Money as God? The Monetization of the Market and its Impact on Religion, Politics, Law and Ethics, Cambridge University Press, 2014, pp.25-6. [未読]
*2:鎮目雅人「貨幣に関する歴史実証の視点 ―貨幣博物館リニューアルによせて―」p. 4. 日本銀行金融研究所貨幣博物館『日本銀行金融研究所貨幣博物館 常設展示リニューアルの記録』2017 所収 調査・研究 - 貨幣博物館 > https://www.imes.boj.or.jp/cm/research/kinken/mod/cm_201703naritachi.pdf
*3:小馬徹「人間とカネ」小馬徹[編]『カネと人生』雄山閣 2002, pp. 127-130.
*4:牛島厳「携えるカネ、据え置くカネ」 ibid., p. 79.
*5:Ibid. pp. 85-94.
*6:Ibid., p. 78.
*7:澤田昌人「パニックの40年」ibid., pp. 179-204.
名古屋大学2007年前期文系問題1
BCの中点をMとおく。
であるから、△A'BB'についてメネラウスの定理の逆よりA, A'', Mは共線である。
これより、AA''は△ABCの重心を通る。BB'', CC''についても同様であるから直線AA'', BB'', CC''は△ABCの重心で交わるが、これが示すべきことであった。
BC, CAを1:2に内分する点をそれぞれP, Qとおき、A'B'とPQの交点をRとする。△A'QR∽△B'RPであり、相似比は2:1なので、A'R:RB'=2:1、つまりRはA''に等しい。
△ABCの重心GはA'Qの中点なので、PB'の中点をMとすると、G, R, Mは共線である。
ここで、MはBCの中点でもあるので、G, M, Aは共線である。これらより、A, A'', Gが共線であることがいえる。BB'', CC''についても同様なので直線AA'', BB'', CC''は△ABCの重心で交わるが、これが示すべきことであった。
この問題でABをk:lに内分した点をA', ..., A'B'をk:k-lに内分した点をA'',... としても同様のことが成り立ちます。