shaitan's blog

長文書きたいときに使う.

クザーヌスの近似

以前、\dfrac{3\sin\theta}{2+\cos\theta}という\thetaの近似関数を用いて入試問題を解いた。
shaitan.hatenablog.com
この近似について少し調べたのでメモ。

クザーヌス

円に内接する正多角形で円周率を近似するのは\sin\phi\approx\phiという近似である。
クザーヌスの方法は、\dfrac{\sin\phi}\phi\approx\dfrac{\cos\phi+x}{1+x}を満たすxを求め、より精度の高い近似をしようとしたものであると考えられる。
\phi=\dfrac\pi4, \dfrac\pi6を代入して\piを消去すると、x\approx\dfrac{2\sqrt3-3}{3\sqrt2-4}\approx1.9\ldots\approx2
x=2を代入して\phi\approx\dfrac{3\sin\phi}{2+\cos\phi}を得る。*1

スネル

屈折の法則でおなじみのスネルである。スネルは、"Cyclometricus" (1621)の中で円の内接多角形と外接多角形による評価が甘いことを議論し、より良い下限として\dfrac{3\sin\theta}{2+\cos\theta}を与えた。しかし、この不等式が成り立つことは証明できていないらしい。*2
www.google.co.jp


ホイヘンス

スネルの使った不等式を証明したのはホイヘンスで、"De circuli magnitude inventa" (1654)にそれが載っているとのことである。*3 証明を追ってみたかったが挫折した。
books.google.co.jp


[2021.8.10追記]
詳細が記載されているpdfを見つけた。津田塾大学数学史シンポジウムの発表資料らしい。田沼晴彦「円の大きさの発見 1654年 ホイヘンスによる円周率の計算」『津田塾大学 数学・計算機科学研究所報』38 (2017), pp. 200-212.
www2.tsuda.ac.jp

*1:Moritz Cantor "Vorlesungen über Geschichte der Mathematik" Vol. 2 (1900), pp. 199-201. https://archive.org/details/vorlesungenber02cantuoft/page/199/mode/2up

*2:P. ベックマン『πの歴史』田尾陽一、清水韶光[訳] ちくま学芸文庫 2006, pp. 189f.

*3:Ibid., pp. 194f.