twitter*1でよくネタにされるものとして自動車運転免許の学科試験の問題が論理的におかしいというのがある。
夜間は気を付けて運転しなければならない。
答:×(昼間も気を付けて運転しなければならないため)
といったものがありがちなパターンである。これについては、「は」をどう解釈するかの問題だと思われる。
取り立て助詞の「は」の場合にそういう翻訳をするんじゃないかという仮説を持ってるんだけど、試験という性格上データが得られず分からない。
— しゃいたん (@faogr) 2023年1月11日
実際の試験では点数が出るわけではなく合否の結果しか分からない。無論、個々の問題の正答も教えてもらえず*2、ましてやその根拠など公開されていないはずなので、上記のような問題は練習問題の類であろう。これらが実際の問題および正答とどの程度の乖離があるかは分からない。
試験問題は少なくとも5年程度で全面的な更新が行われ、問題作成時には学科試験事務担当者問題の内容が分かりやすいものとなるよう配慮し、運転免許試験担当課長は問題の正誤や問題文が分かりづらくならないよう審査するよう通達されている。*3 そのため、現在においては上記のような問題が出題されなくなっている可能性もある。
なお、同通達では問題ごとの正答率を定期的に把握・分析するよう指示されているが、IT相関*4などは分析対象ではなさそうである。
長々と書いたが、正直なところ個々の問題の質を向上させることがそこまで重要と考えているわけではない。また、禁忌肢はあっても良さそうに思う。*5
「酒を飲んでも短距離なら公道を運転してよい」みたいな設問に○つけても他の問題の出来によっては免許貰えるという現行制度の頭おかしさを考えれば、変な問題が入ってることなんか些末なことだ(実質的に合格ラインを上げる作用があるのでむしろプラスに働くと思う)。
— しゃいたん (@faogr) 2015年9月23日
話がそれてしまった。実際に「夜間は~」のような問題が出題されたか(あるいは、今後出題されるか)はどうでもよい。私自身も今まで試験をいろいろ受けてきた結果、そのような読み方をすることに慣れきってしまっているのだが、試験という文脈においては出題者がグライスの協調の原理に従わないことを前提とした解釈をされるということに気付いて面白いと思ったという話である。
*1:現X。ただし私の観測範囲内。
*2:仮に点数が出るのだとすると、気になる問題一問だけを解くことで正答を知ることが可能である。例えばTOEICだと、どの問題がどの項目別正答率に該当するかを調べるためにリスニングとリーディングを1問だけ解いて調べた人がいる。 疑問54 リーディング 前置詞と接続詞の項目 | TOEIC対策 疑問ひたすら100連発 by ヒロ前田
*3:警察庁の施策を示す通達(交通局)|警察庁Webサイト > 「学科試験の適正な管理について(通達)」(令和3年6月18日付け警察庁丁運発第135号)
*4:item-test correlation. ある問題に対する正誤のダミー変数とテストの素点との相関係数。受験者の能力を識別する上では正の大きな値であることが望ましい。(光永悠彦『テストは何を測るのか 項目反応理論の考え方』ナカニシヤ出版 2017, p. 146.)
*5:違反点数に応じて重みをつける、というのも面白いかもしれない。