新明解国語辞典第七版*1および第八版*2の「雲級」の語釈に変な記述がある*3。
巻(ケン)雲・巻積雲・巻積雲・高積雲・高層雲〔以上、上層雲〕、層積雲・層雲・乱層雲〔以上、中層雲〕、積雲・積乱雲〔以上、下層雲〕。
この項目だけの誤記かと思いきや、「上層」の用例と文脈に即した意味*4として
―雲〔=巻雲・巻積雲・巻層雲・高積雲・高層雲の総称。⇨雲級。〕
というのが載っており、「下層」も同じく「雲級」の語釈に沿う記述である。「中層雲」だけなぜか用例ではなく追い込み項目が立ててあるが、内容は同様。
つまり、この分類が正しいという確信のもとに書かれている訳であるが、なぜそうなったのかは想像がつかない。
世界気象機関(World Meteorological Organization, WMO)の雲の分類*5 や気象庁の公開している情報*6*7や理科年表のFAQ*8を見る限り、巻雲・巻積雲・巻積雲を上層雲に、高積雲・高層雲・乱層雲を中層雲に、層積雲、層雲、積雲、積乱雲を下層雲に分類するのが一般的なようである。
なお、『一般気象学 第二版』では、乱層雲を下層雲に分類している*9 が、〈従来下層雲の一つとされていた乱層雲はその雲頂高度が7km以上にも及ぶため下層雲からはずされた〉*10 らしいので、これは古い分類なのだろう。
*1:山田忠雄ほか編『新明解国語辞典』第七版 三省堂 2012. [電子辞書版]
*2:山田忠雄ほか編『新明解国語辞典』第八版 小型版 三省堂 2020.
*3:これら以前の版については未調査
*4:〈文脈に即した意味は、用例のあとの〔=…〕の形によって簡潔に示した。〉 (Ibid., p. 8)
*5:Definitions of clouds | International Cloud Atlas
*7:気象庁『気象観測の手引き』1998, pp. 50ff. https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kansoku_guide/tebiki.pdf
*8:理科年表オフィシャルサイト/FAQ/気象部:雲の種類とその特徴を教えてください。
*9:小倉義光『一般気象学 第二版』東京大学出版会 1999, p. 100.
また、対流雲はこれらの分類から外れている。
*10:『百科事典マイペディア』平凡社 「下層雲」 下層雲とは - コトバンク