shaitan's blog

長文書きたいときに使う.

山川倫理用語集第二版

というわけで読んでいる本の一つが山川の用語集*1であるが、気になる箇所も多い。


天下の山川出版が出している用語集なのだから校閲をしっかりして欲しいものである。大学生以上なら本に書いてあることは嘘かもしれないと思って読んで欲しいところだが、高校生が手にする学習参考書としては害が大きい。各項目の執筆者は明らかではない。まえがきには〈執筆は小寺聡のほかに、福田誠司など諸先生が行い〉とあるが、奥付を見ると〈執筆(五十音順) 小寺聡 福田誠司〉と二人の名前しかなく、他に誰が書いたのか(あるいは実は二人だけで分担したのか)すら判然としない。
とりあえず、変な記述について分かりやすいものをここに書いておくこととする*2。もちろん、これ以外はまともであると主張するものではない。

第I部 青年期の特質と課題

第1章 青年期の性質

マーガレット=ミード

〈サモア島では[…]青年期特有の葛藤かっとう現象がないことをみつけた。〉(p. 4)


ただし、「倫理」という科目としては著書が与えた影響の大きさにこそ意味があるのであり、事実かどうか、研究手法上問題があったかどうかなどはどうでもよいということかもしれない。 そういう意味では用語集(だけ)の問題ではないともいえる。

第3章 生きる意味を求めて

「イマジン」

〈権力によって人を支配する人為的じんいてきな国家という枠組みをこえて、人類が国家・民族・宗教の対立から解放され、平和と愛の中に共存する自由な理想世界を訴えた〉(p. 21.)
〈Imagine there's no countries〉の後には〈Nothing to kill or die for〉と続く。異なる国の人々が対立する原因としての国について歌っているのであり、国家内部における権力や支配など出てこない。
民族対立を勝手に付け加えているが、実際には民族ではなく財産の私有のない世界を想像しろと歌う。また「自由な」についてもその価値を積極的に主張している歌詞ではない。

第II部 思想の源流

第2章 ギリシアの思想

『イリアス』

イリアスのあらすじからスムーズに〈やがて、ギリシア軍のつくった木馬の腹に隠れた兵士によってトロイアの城は燃えて陥落し、ギリシア軍の勝利に終わる〉(p. 37)とつないでおり、あたかも木馬の計がイリアスで歌われているかのように書いてある。

アリストパネス(アリストファネス)

項目名として古典ギリシャ語のφ音(帯気音化した無声両唇閉鎖音)の書き方の揺れが気になる。アリストパネスだけ括弧書きで併記されているが、他の人名の項目はファ行を当てた表記だけで書かれている(なお、人名由来のタイトルであるが、『パイドン』は「パ」を当てた項目になっている)。また、クセノファネスの項だけにわざわざ〈クセノパネスとも発音する〉(p. 40) とあるが、こんなこといちいち書くくらいならアリストパネス式に項目名に入れたらよかったように思う。
解説であるが、〈代表作に、女性の立場から戦争の愚かさを批判した『平和』、ソクラテスの問答法を風刺した『雲』や『蛙』などがある。〉(p. 38)とあり、これらの記述は明らかにおかしい。『平和』は女性の立場ではなく農民の立場からの戦争批判である。「女性の」というところを見ると、もしかすると『女の平和(リュシストラテ)』と混同しているのかもしれない。また、いずれの作品にしても、それぞれの立場からの不満が吐露されている(農民は農地を荒らされ、女性は欲求不満である)が、「戦争の愚かさを批判した」と言い切って良いかは疑問である。
『雲』には確かにソクラテスという登場人物が出てくるものの、塾を構えて自然哲学や弁論術を教えるソフィストであり、プラトンに言わせればまったくの出鱈目である*3。少なくとも「ソクラテスの問答法」は出てこない。また、この書き方だと『蛙』もソクラテスの問答法の風刺しているように読めてしまうが、『蛙』だけは内容に言及がなかっただけである、と好意的に考えることとしよう。それなら他の2作品もタイトルだけにしとけば良かったろうにとは思うが。

ギリシア悲劇

〈オルケストラと呼ばれる舞台でコロス(合唱隊)が歌い、その前で役者が劇を演じた。〉(p. 38) とあるが、劇場のつくりを勘違いしている。役者はオルケストラの後ろで劇を演じた。*4

アトム(原子)

〈19世紀にドルトン(J. Dolton 1766~1844)によって原子の基本的構造が科学的に明らかにされ〉(p. 41) とあるが、ドルトンの原子説はあくまでも仮説であって「科学的に明らかに」したわけではないし、その仮説の内容も「原子の基本的構造」というよりは「物質の基本的構造」についてであると言った方が正確であろう。原子の基本的構造(そもそも現在の科学でいう「原子」はアトム(分割できないもの)ではないからこそ「構造」がある)を科学的に明らかにした人と言われれば、ラザフォードを思い浮かべる人が多いのではなかろうか。

*1:濱井修[監] 小寺聡[編]『倫理用語集 第2版』山川出版社 2019.

*2:どことなく書きぶりが変で、執筆者は分かってなさそうな感じがするが、明らかな間違いであるともいいづらい、みたいなものは指摘として挙げづらい。

*3:『ソクラテスの弁明』18B-D, 19B-C

*4:西洋古典学者の逸身喜一郎によれば、〈役者は[…]ときにはオルケーストラーまで降りてきたかもしれない〉とのことであるが、具体的な場面や根拠までは書かれてはいない。(逸身喜一郎『ギリシャ・ラテン文学 韻文の系譜をたどる15章』研究社 2018, p. 290.)

2013年早稲田大理工系問題5(3)

2013 早稲田大学 基幹理工学部,創造理工学部,先進理工学部2月16日実施MathJax

(1)(2)略
(3)
T'はTの4頂点の正射影の凸包であるから三角形もしくは四角形である。
三角形の場合は2辺、四角形の場合は2本の対角線の長さをx, yとおき、この2線のなす角をθとおくと、T'の面積Sは S=\dfrac{xy\sin\theta}2\leq\dfrac12 となる。なぜなら、x, y はいずれもTの辺の正射影の長さなので1以下であるから。
ここで、Tの共有点を持たない2辺の中点どうしを通る直線がPに垂直となるときに等号が成立するので求める最大値は \dfrac12.


1988年に東大で最小値も求めさせる問題が出ている(1988 東京大学MathJax, 東大理科 1988前期 2)。本当はこちらを解きたかったのだが、最小値の方は普段参照している解答*1と異なる方針で解けなかったのでやめた。
以下、没案。平面の単位法線ベクトルを \vec n とおくと、 \vec x の正射影は \vec x-(\vec x\cdot\vec n)\vec n なので、外積をごちゃごちゃ計算すると面積が |sinθ±sin(α±β)|/2 (sinθ=1, √3/2である。符号はちゃんと考えていない)みたいになるっぽいのだが、いい感じに評価しきれずにこの方針は諦めた。他に気付いた事として、一辺が1の立方体の直交する三辺の正射影を考えると、それらの長さの二乗和は2になる(法線への正射影の二乗和はその三辺を基底としたときの単位法線ベクトルの成分の二乗和なので1であることから従う)というのがある(私が知らなかっただけで有名事実なのであろう)。直交する三線分を設定してみたり、あるいは逆に直交しないベクトルたちで同様の不変量がないか考えたりといじくってみたものの、最小値を求めるのにはうまく活用できなかった。

2000年京大理系問題3

2000 京都大学 前期MathJax
京大理系 2000前期 3

(1)
\vec c の方向がZ軸正方向となり、\vec a がXZ平面に含まれるように*1、直交するXYZ座標をとる。このとき、Z軸と \vec a, \vec b のなす角はそれぞれ α、βであることに注意すると、
\vec a=(\sin\alpha, 0, \cos\alpha), \vec b=(\sin\beta\cos\theta, \sin\beta\sin\theta, \cos\beta) となる。ここで、\vec a\vec b のなす角が \dfrac\pi3 であるから、\dfrac12=\cos\dfrac\pi3=\vec a\cdot\vec b=\sin\alpha\sin\beta\cos\theta+\cos\alpha\cos\beta となる。両辺から \cos\alpha\cos\beta を引いて平方して、\cos^2\alpha\cos^2\beta-\cos\alpha\cos\beta+\dfrac14=\sin^2\alpha\sin^2\beta\cos^2\theta\leq(1-\cos^2\alpha)(1-\cos^2\beta)=\cos^2\alpha\cos^2\beta-\cos^2\alpha-\cos^2\beta+1 となるが、これを整理すると(*)が得られる。

(2)
(1)の計算より、
(*)
\left(\dfrac12-\cos\alpha\cos\beta\right)^2\leq\sin^2\alpha\sin^2\beta
-\sin\alpha\sin\beta\leq\dfrac12-\cos\alpha\cos\beta\leq\sin\alpha\sin\beta
\cos(\alpha+\beta)\leq\dfrac12\leq\cos(\alpha-\beta)
\dfrac\pi3\leq\alpha+\beta\leq\dfrac{5\pi}3 かつ -\dfrac\pi3\leq\alpha-\beta\leq\dfrac\pi3
(図省略)


(1)
\vec e_1=\vec a-\vec b, \vec e_2=\dfrac{\vec a+\vec b}{\sqrt3}, \vec e_3=(0, 0, 1) とおくと、\vec e_i\cdot\vec e_j=\delta_{i j} なので*2\vec c=\displaystyle\sum_{i=1}^3(\vec c\cdot\vec e_i)\vec e_i
これより 1=|\vec c|^2=\displaystyle\sum_{i=1}^3 (\vec c\cdot\vec e_i)^2\geq (\vec c\cdot\vec e_1)^2+ (\vec c\cdot\vec e_2)^2=\dfrac43\text{((*)の左辺)} であるから示された。

(2)
(*)が成り立つとき、\vec d=(\cos\alpha-\cos\beta)\vec e_1+\dfrac{\cos\alpha+\cos\beta}{\sqrt3}\vec e_2+t\vec e_3 とおく。ただし t=\sqrt{1-\dfrac43\text{((*)の左辺)}} とする。このとき、|\vec d|=1, \vec a\cdot\vec d=\cos\alpha, \vec b\cdot\vec d =\cos\beta であるから、(*)が成り立つなら(1)の条件を満たすベクトル \vec c が存在する。(1)の結果と合わせて、(*)は(1)の条件を満たすベクトル \vec c が存在することと同値。よって求める範囲は球面における三角不等式より \dfrac\pi3\leq\alpha+\beta\leq\dfrac{5\pi}3 かつ -\dfrac\pi3\leq\alpha-\beta\leq\dfrac\pi3 (図省略)。


(2)
\cos^2\alpha+\cos^2\beta=1+\dfrac12(\cos2\alpha+\cos2\beta)=1+\cos(\alpha+\beta)\cos(\alpha-\beta)
\cos\alpha\cos\beta=\dfrac{\cos(\alpha+\beta)+\cos(\alpha-\beta)}2
であるから、
(*)
\left(\cos(\alpha+\beta)-\dfrac12\right)\left(\cos(\alpha-\beta)-\dfrac12\right)\leq0
⇔ 「\dfrac\pi3\leq\alpha+\beta\leq\dfrac{5\pi}3 かつ -\dfrac\pi3\leq\alpha-\beta\leq\dfrac\pi3」または「\alpha+\beta\leq\dfrac\pi3, \dfrac{5\pi}3\leq\alpha+\beta かつ |\alpha-\beta|\geq\dfrac\pi3
\dfrac\pi3\leq\alpha+\beta\leq\dfrac{5\pi}3 かつ -\dfrac\pi3\leq\alpha-\beta\leq\dfrac\pi3
(図省略)


(2)
\cos\alpha, \cos\beta が同符号のとき、∠A=\dfrac\pi3, \mathrm{AB}=|\cos\alpha|, \mathrm{AC}=|\cos\beta| である△ABCを考えると、余弦定理より(*)の左辺=\mathrm{BC}^2 である。よって、
正弦定理より(*)の等号成立条件は△ABCの外接円の半径が \dfrac12 であること。このとき、∠B=\left|\dfrac\pi2\pm\beta\right|, ∠C=\left|\dfrac\pi2\pm\alpha\right| となるので、三角形の内角の和を考えて |\alpha\pm\beta|=\dfrac\pi3, \dfrac{5\pi}3 となる。\cos\alpha, \cos\beta が異符号のときは∠A=\dfrac{2\pi}3 とすれば同様。\cos\alpha, \cos\beta のいずれか一方が0のとき、他方は \dfrac{\sqrt3}2 であり、\{\alpha, \beta\}=\left\{\dfrac\pi2, \dfrac\pi2\pm\dfrac\pi3\right\} となるので、この条件も |\alpha\pm\beta|=\dfrac\pi3 に含まれる。
以上より、0\leq\alpha, \beta\leq\pi には(*)の等号が成立しない5つの凸領域がある。これらの領域のそれぞれにおいて、領域内のある点で(*)が成立することと、領域内の任意の点で(*)が成立することは同値である。なぜなら、領域内に(*)が成立する点と成立しない点があると仮定すると、それらを結ぶ線分もこの領域に含まれるが、中間値の定理よりその線分上で(*)の等号が成立する点が存在するので矛盾するからである。よって、それぞれの領域内の一点について調べればよい。
(\alpha, \beta)=\left(\dfrac\pi2\pm\dfrac\pi2,\dfrac\pi2\pm\dfrac\pi2\right) のとき(*)が成立せず、(\alpha, \beta)=\left(\dfrac\pi2,\dfrac\pi2\right) のとき(*)が成立するので、求める範囲は(略)。



最初の解答の \vec a\vec b の内積の式は球面三角法の余弦定理である。
上記の解答はいずれも基底の取り換えを行っている。問題文で(|\vec a|=|\vec b|=1, \vec a\cdot\vec b=\dfrac12 だけでもいいところを)わざわざ座標を設定して \vec a\vec b の成分を書き下してあるので、それを使って解いて欲しいのだろうが。

*1:\vec a\vec c は必ずしも面を張るとは限らないため、このような言い回しをしている。

*2:\delta_{i j}=\begin{cases}1 & i=j\\0& i\neq j\\\end{cases} はクロネッカーのデルタ

2009年東大理系問題1

2009 東京大学 前期MathJax
東大理科 2009前期 1

(1)略
(2)
以下、合同式の法は d_m とする。
すべての整数kに対しこの命題を示せば十分である。k=0のとき確かに成り立つので、k^m-k\equiv0(k+1)^m-(k+1)\equiv0 を示せばよい。
(k+1)^m-(k+1)-(k^m-k)=\displaystyle\sum_{j=1}^{m-1}\binom mjk^j\equiv0 であるから示された。

(3)
(2)の結果に k=-1 を代入して、2が d_m で割り切れるので d_m=1, 2


「1または2であることを示せ」と言われた場合にそれぞれの値をとるmの存在までは示す必要はないだろう。最初に解いたとき*1からこのかた、(3)は(2)に固執しても大変なだけで 0=(1-1)^m=2+\displaystyle\sum_{j=1}^{m-1}\binom mj(-1)^j から2が d_m で割り切れることを言うのがよいと思っていたのだが、(2)が使えることに十数年越しに気づいた。問題文が「整数」ではなく「自然数」になっているのはニクい。
なお、d_m はmが素数pの累乗のときp、それ以外のとき1となる。

(i)mが素数の累乗でないとき
m=qp^k(p:素数、q≧2、pとqは互いに素)とおく。\displaystyle\binom m{p^k} はpの倍数ではないことがルジャンドルの公式*2 よりわかるので、d_m はpで割り切れない。他の素因数についても同様にいえるので d_mm と互いに素であるが、\displaystyle\binom{m}{1}=md_m で割り切れるので d_m=1 である。
(ii)mが素数の累乗のとき
m=p^{k+1}(p:素数)とおく。k=0 のときは(1)で求めたのでk≧1の場合を考える。
(i)と同様にして \displaystyle\binom m{p^k}p^2 の倍数ではないことがわかり、 \displaystyle\binom{m}{1}=m はp以外の素因数をもたない。
1\leq n< m を満たす n に対し、\displaystyle\binom mn=\dfrac mn\binom{m-1}{n-1}\dfrac mn はpの倍数なので、\displaystyle\binom mn はpの倍数。
以上より d_m=p となる。



上記(i)の議論で1997年京大前期理系問題2(1997 京都大学 前期MathJax京大理系 1997前期 2)も解ける。

2012年京大文理共通問題2

2012 京都大学 前期MathJax
京大理系 2012前期 2

OP≦OQ≦OR としてよい。Qを通り面ABCと平行な面とOA、OCの交点をそれぞれS, Tとおく。
OP≦OQ=OSであるから、Pは端点を含む線分OS上にある。したがってQP≦QSである。
OR≧OQ=QTであるから、Rは端点を含む線分TC上にある。したがってQR≧QTである。
以上よりQP≦QS=QT≦QRであるが、△QPRが正三角形のときは等号が成立する。このとき、Pは(Oには一致しないので)Sに、RはTに一致するからOP=OQ=ORとなる。△OPQは正三角形であり、∠POQ=∠OABより同位角が等しいのでPQはABに平行。他の辺も同様である。


正三角形でない△XYZにおいて、∠X=60°とする。このとき、∠Y, ∠Zは一方が60°未満、他方が60°より大きく120°未満となる。つまり、sin∠Yとsin∠Zは一方がsin∠Xより大きく、他方はsin∠Xより小さい。正弦定理よりyとzは一方がxより大きく、他方はxより小さい。
△PQRが正三角形であるとする。OP< PQと仮定すると、△OPQは正三角形ではないのでOQ>PQ=QRとなる。同様に△OQRを考えてOR< QR=PR、更に△OPRを考えてOP>PR=PQ>OP となり矛盾。OP>PQのときも同様。したがってOP=PQである。同様にOQ=PQであるから△OPQは正三角形であり、∠POQ=∠OABより同位角が等しいのでPQはABに平行。他の辺も同様である。


このときの文系問題4は命題が真なら証明させ、偽なら反例を挙げさせる問題で、そのうちの一つが「△ABCと△A'B'C'において、AB=A'B', BC=B'C', ∠A=∠A'ならばこれら2つの三角形は合同である」である。
仮にこれが真であれば、△PQRが正三角形のときに△OPQ≡△OPRよりOQ=OR等が言えてしまう。問題4の命題が真なら全く同じ証明を2つの大問で流用できてしまうのがあまりに不自然なので偽だろうと推測できてしまう。問題4で反例を考えるのも次元を落として三角形の合同を考察させるので問題2のヒントになると思われる。大問の組み合わせが誘導みたいになってるのはちょっと面白い。
二番目の解答で一つの角が60°の三角形に正弦定理使うのどこかでやったなと思ったが、1990年京大前期理系問題2 - shaitan's blog だった。

1996年東大前期理系問題4

1996 東京大学 前期MathJax
東大理科 1996前期 4

(1)
(i) \max\limits_{1\leq k\leq n-1}c_k\neq6 のとき
c_k<6\quad(1\leq k\leq n-1) であるから、この確率は \left(\dfrac56\right)^{n-1}\to0\quad(n\to\infty) であり、このときの a_n の期待値は高々6以下であり有限。

(ii) それ以外
(i)の結果よりこの確率は n\to\infty で1であり、a_k=\begin{cases} 0 & c_k<6\\  6&c_k=6\end{cases} であるから、このときの a_n の期待値は1。

(i),(ii) を合わせて、求める期待値は1

(2)
1回目に出た目の数が1, 2, それ以外となる場合を分けて考えると、
N(n+1)=\dfrac16N(n)+\dfrac16(N(n)+1)+\dfrac46\cdot0=\dfrac13N(n)+\dfrac16
これを変形して
N(n)=\dfrac32(N(n)-N(n+1))+\dfrac14\to\dfrac14\quad(n\to\infty)
ただし、(1)の議論により a_n=2 となる確率は n\to\infty で0なので、\lim\limits_{n\to\infty}(N(n+1)-N(n))=0 であることを用いた。


(2)
\lim\limits_{n\to\infty}N(n) は3以上の目が出るまでに出た2の目の数の期待値であるが、これが3以上の目が出るまでに出た1の目の数の期待値に等しいことを考えると、3以上の目が出るまでに出た2以下の目の数の期待値の半分である。確率 p で実現する事象が起こるまでの試行回数の期待値は \dfrac1p であること*1に注意して、求める期待値は \dfrac12\left(\left(\dfrac46\right)^{-1}-1\right)=\dfrac14

*1:示した方が良さそうだが、上と同様の漸化式を立てることになるため省略した。

1981年東工大前期問題1

東科(旧東工)大 1981前期 1

\alpha=0.c_1c_2\cdots_{(2)} とおくと、b_n=0.c_nc_{n+1}\cdots_{(2)} となるから、c_n=\begin{cases}0& n\text{が奇数}\\1& n\text{が偶数}\end{cases} すなわち \alpha=0.\dot0\dot1_{(2)}. これより 4\alpha-\alpha=1 であるから \alpha=\dfrac13, a_n=\left\lfloor\dfrac{2^{n-1}}3\right\rfloor=\dfrac{2^n-(-1)^n-3}6.


床関数のままの方がきれいだとは思うが、\alphaa_n の両方を問われているのだから(といっても、a_n を先に求めさせる意図のような気もする)外す方がいいかなという判断。また、二進数から分数への変換も単にイコールでつなぐだけでも良かったが少し言葉を補った。

2019年大阪市立大の後期工学部問題4(2019 大阪市立大学 後期MathJax)も同様に解けて、\alpha=0.\dot1\dot0_{(3)}=\dfrac{10_{(3)}}{3^2-1}=\dfrac38 となる。また、2006年の県立広島大の問題(https://x.com/issiki_kyoto/status/2077377763376574906)だと a=0.\dot01\dot2_{(3)}=\dfrac{12_{(3)}}{3^3-1}=\dfrac5{27} である。