shaitan's blog

長文書きたいときに使う.

一橋大学2024年前期問題3

2024 一橋大学 前期MathJax

与えられた条件より、f(x)-\dfrac{x}2-\dfrac32(x\pm1)^2で割ると-\dfrac12(x\pm1)余る(複合同順、以下同じ)。
また、x(x+1)(x-1)(x\pm1)^2で割ると2(x\pm1)余る。
以上よりf(x)-\dfrac{x}2-\dfrac32+\dfrac14x(x+1)(x-1)(x\pm1)^2で割り切れる。この多項式は4次の係数が1の4次多項式であるから(x+1)^2(x-1)^2に等しい。
したがって、
f(x)=(x+1)^2(x-1)^2-\dfrac14x(x+1)(x-1)+\dfrac{x}2+\dfrac32
=(x^4-2x^2+1)-\dfrac14(x^3-x)+\dfrac{x}2+\dfrac32
=x^4-\dfrac14x^3-2x^2+\dfrac34x+\dfrac52
となる。


なんかごちゃごちゃ書いてましたが書き直しました。

一橋大学2024年前期問題2

2024 一橋大学 前期MathJax

2曲線のある共有点における接線は一致しないので、CとC'は交わり、これらは共有点を2つ持つ。
共有点をA, Bとおく。線分ABの中点Mを中心とする180°回転操作で、CはC'に移り、点AにおけるCの接線は点BにおけるC'の接線に移り、線分ABは線分BAに移ることに注意すると、求める値は「曲線C上の2点P、Qにおけるそれぞれの接線が直交するとき、Cと線分PQで囲まれた部分の面積の最小値の2倍」である。
P, Qのx座標をp, q (ただしp>q)とすると、それぞれの接線の傾きは2p, 2qであるから、直交する条件より4pq=-1となる。これとp>qよりp, -q>0である。したがって相加平均と相乗平均の関係よりp-q\geq2\sqrt{-pq}=1となる。等号成立条件はp=-q=\dfrac12であるから、これを満たすような点P, Qは存在する。
Cと線分PQで囲まれた部分の面積の2倍は\displaystyle-2\int_p^q(x-p)(x-q)\mathrm{d}x=\cdots=\dfrac13(p-q)^3であるから、p-qの最小値が1であることとあわせて、求める最小値は\dfrac13となる。



東工大2009年前期(2009 東京工業大学 前期MathJax)問題1に似ている。

陰謀論

政治学者のユージンスキは、陰謀を「権力を持つ個人からなる少人数の集団が、自分たちの利益のために、公共の利益に反して秘密裏に行動するもの」、陰謀論を「過去、現在、未来の出来事や状況の説明において、その主な原因として陰謀を挙げるものと定義している。*1
また、哲学者のKeeleyは陰謀を「(政治的・社会的・経済的に)強い力を持つ2人以上のアクターによる秘密の企み」(secret plot by two or more powerful actors)*2 としている。学術研究における文脈での「陰謀」は、特にそれが極めて広い範囲に影響を及ぼす場合を指す。政治学者の秦正樹は陰謀論を「政治や社会において重大な事件・出来事が起きた究極的な原因を、強い力を持つ2人以上のアクターによる秘密の企みで説明しようとする試み」と表現し、政治学者ミハエル・バークンの"definition of conspiracy theory: nothing happens by accident; nothing is as it seems; and everything is connected."*3を踏まえた上で「重要な出来事の裏では、一般人には見えない力がうごめいている」と考える思考様式であるとの定義を与えている。*4

これらの基準に照らせば、

は明らかに上記定義からは外れた用法になるし、

のように超越的な存在が力を及ぼしている場合も除外される。*5

宗教に関する著作の多い中村圭志は、近現代に生まれた非科学的で宗教めいた信念や言説に対して「亜宗教」という名前を与えている*6が、怪しげなものを何でも「陰謀論」呼ばわりするよりは、こういった呼称を用いる方が適切であろう。

上でユージンスキや秦が「定義」したと書いたが、これはあくまでもその著書の中では原則としてその意味で用いるといった注意にすぎない。ユージンスキの言葉を借りれば、〈コミュニケーションを取る際に大切なのは、重要な用語をどのように使用するかについてお互いに同意しておくことだ。〉*7 ということである。

実際に使われている「Aは陰謀論である」は、Aが嫌いであるという話者の心情の表出にすぎないことも多い。いわゆる "snerl-word" *8としての用法である。
そのような意味で使っているとの誤解を生みかねない以上、この語を断りなしに使うのは控えるようにしようと思っている。*9

*1:ジョゼフ・E・ユージンスキ『陰謀論入門』[Joseph E. Uscinski, "Conspiracy Theories: A Primer" Rowman & Littlefield Pub Inc, 2020] 北村京子[訳] 作品社 2022, pp. 41, 43.

*2:Brian L. Keeley, "Of Conspiracy Theories", J. Philos. 96(3) 109-126 (1999). https://doi.org/10.2307/2564659 [未読]

*3:M. Barkun, "A Culture of Conspiracy: Apocalyptic Visions in Contemporary America." University of California Press (2013). [未読]

*4:秦正樹『陰謀論中公新書 2022, pp. 4-6.

*5:これらの投稿は2年半ほど前だが、実際に自分も陰謀の存在を前提とせずにこの語を使っていたのか、それともそういう用法を揶揄するつもりだったのかは思い出せない。

*6:中村圭史『亜宗教』集英社インターナショナル 2023, p. 5.

*7:ユージンスキ op. cit., p. 40.

*8:S. I. ハヤカワ『思考と行動における言語』[S. I. Hayakawa "Language In Thought And Action" 4e, HBJ (1978)]大久保忠利[訳] 岩波書店 1985, pp. 46f.

*9:否定的な印象を与えられる上に、批判されたら「あくまでもその論の構造について述べたものであり、価値判断を含まない」と逃げられる便利な言葉なので、むしろ積極的に使っていこうという考え方もできる。

阪大2024年前期理系問題3文系問題2

2024 大阪大学 前期MathJax

\ell, mの方向ベクトルを\vec{\ell}, \vec{m}とおく。\ellmは平行ではないので\vec{\ell}, \vec{m}のなす面の法線ベクトルを\vec{n}とおくと、これは\ellmの両方に直交する直線の方向ベクトルである。このとき、\ellmの両方に直交する直線は、\ell\vec{n}を含む面とm\vec{n}を含む面の両方に含まれる。この2面は平行ではない(仮に平行であるとすると、\vec{\ell}, \vec{m}, \vec{n}は同一平面上にあり、\vec{\ell}\perp\vec{n}\perp\vec{m}より\ellmが平行となるため矛盾)。これより、\ellmの両方に直交する直線はこの2面の交線となるから高々1本であり、この交線は\ellmの両方に直交するので示された。

京大2024年理系問題3

2024 京都大学 前期MathJax

「直線QYと直線PXがねじれの位置にある」⇔「点P, Q, X, Yが同一平面上にない」⇔「直線PQと直線XYが交わらず、かつ平行でない」
△APQ∽△AOBよりPQ//OBであるから、PQは平面OBCと平行である。また、点Aは平面OBC上にないので、PQは平面OBC上にない。さらに、直線XYは平面OBC上にあるので、XYとPQが交わることはない。
以上より、XYがPQと平行でないための必要十分条件を求めればよい。
XY//PQ ⇔ XY//OB ⇔ x=y なので、求める必要十分条件x\neq yである。

東大2024年前期理系問題3

2024 東京大学 前期MathJax
(1) 略
(2)
最初からk秒後(k\geq0)の位置が、kが偶数のときに点Pと一致し、kが奇数のときにx軸に関して点Pと対称な点であるような点Qを考える。
規則(i), (ii)より、点Qは原点中心で点(2,1)を通る円周上にあるから、点Qを極座標表示したときの偏角だけを考えればよい。
規則(i)より、点(2, 1)を極座標で表したときの偏角\alphaとすると点Qは最初に\alphaにいる。
規則(ii)より、ある時刻にQが\thetaにいるとき、その1秒後にQは
確率\dfrac13\theta、確率\dfrac13\theta-\pi、確率\dfrac16\theta-\dfrac\pi2、確率\dfrac16\theta-\dfrac{3\pi}2
にいる。
これより、最初からn秒後にQが\alpha-\dfrac{m\pi}2 (m=0, 1, 2, 3)にいる確率はf(x)=\left(\dfrac13+\dfrac{x^2}3+\dfrac{x}6+\dfrac{x^3}6\right)^nの、4で割った余りがmとなる次数の項の係数の総和に等しい。
f(x)1+x^2で割り切れるので、n秒後にQが\phiにいる確率と\phi-\piにいる確率は等しい。Qと一致もしくはx軸に関して対称な位置にあるPについても同様のことが成り立つため(2)は示された。
(3)
最初からn秒後にQが\pm\alphaにいる確率を考える。
Qは\alpha-\dfrac{m\pi}2 (m=0, 1, 2, 3)のいずれかにいるが、0<\alpha<\dfrac\pi4であるから、Qは-\alphaにいることはない。
Qが\alpha-\dfrac{m\pi}2にいる確率をp_mとする。p_0+p_1+p_2+p_3=1であり、(2)の結果よりp_0=p_2, p_1=p_3、また、p_0+p_2-p_1-p_3=f(-1)=3^{-n}であるから、p_0=\dfrac14\left(1+3^{-n}\right)となる。
点Pはnが偶数のときに点Qと一致するので、求める確率は、nが奇数のとき0、nが偶数のとき\dfrac14\left(1+3^{-n}\right)となる。



[2024/3/1 追記]
(1)の8点のうち、nの偶奇によって取りうるのは4点ずつであることを示したのち、
規則(ii)を

それぞれ「x軸」、「y軸」、「直線y=x」、「直線y=-x」と書かれた白いカード4枚とそれぞれ「x軸」、「y軸」と書かれた赤いカード2枚があり、ランダムにこのカードを引いて戻す。カードに書かれた直線に対して対称な位置に点Pが移動する

と考えると、n回の試行のうち1回でも白いカードを引いた場合、点Pが(a, b), (-b, a), (-a, -b), (b, -a)のいずれにある確率も等しいことが言える。赤いカードのみを引き続ける確率は3^{-n}であるから、\dfrac14\left(1-3^{-n}\right)+\dfrac12\cdot3^{-1}=\dfrac14\left(1+3^{-n}\right)と計算することができる。

[2024/3/17 追記]
点Pが「ある」ではなく「いる」となっているのがちょっと面白い。
日本語では有生性によって存在動詞を使い分けるが、シンハラ語でもそのような使い分けが存在する。主語の数によらず、無生物なら ඉන්නවා /tiyenavā/ となり、生物であれば ඉන්නවා /innavā/となる。*1

*1:野口忠司『ニューエクスプレスプラス シンハラ語白水社 2021, p. 68.

東大2024年前期理系問題2

2024 東京大学 前期MathJax
(1)
t=\tan\thetaと置換すると、f(x)=\displaystyle\int_0^{\frac\pi4}|\tan\theta-x|\mathrm{d}\thetaとなる。
ここで、右辺は\theta u平面においてu=\tan\theta, u=x, \theta=0, \theta=\dfrac\pi4で囲まれた領域の面積である。この面積は\displaystyle\int_0^xg(u)\mathrm{d}u+\int_x^1\left[\dfrac\pi4-g(u)\right]\mathrm{d}uに等しい。ただしg(u)0\leq\theta\leq\dfrac\pi4の範囲における\tan\theta逆関数である。
この面積がf(x)に等しいので、f'(x)=2g(x)-\dfrac\pi4である。求める実数\alpha0<\alpha<\dfrac\pi4よりg(\tan\alpha)=\alphaであることに注意して、x=\tan\alphaを代入すると0=f'(\tan\alpha)=2\alpha-\dfrac\pi4より\alpha=\dfrac\pi8となる。
(2)
AB=AC=1であるような直角二等辺三角形を考える。∠Bの二等分線とACの交点をDとする。このとき、BA:BC=DA:DCなので、\tan\dfrac\pi8=\dfrac{\mathrm{AD}}{\mathrm{BA}}=\dfrac{\mathrm{AD}}{\mathrm{AD}+\mathrm{DC}}=\dfrac{\mathrm{AB}}{\mathrm{AB}+\mathrm{BC}}=\dfrac1{1+\sqrt2}=\sqrt2-1となる。
(3)
h(x)=\displaystyle\int_0^x\tan\theta\mathrm{d}\thetaとおくと、h(x)=-\ln|\cos x|=-\dfrac12\ln\cos^2x=-\dfrac12\ln\dfrac{\cos2x+1}2である。
f'(x)の符号を考えると、最小値は、
f\left(\tan\dfrac\pi8\right)=\displaystyle\int_0^{\frac\pi8}\left(\tan\dfrac\pi8-\tan\theta\right)\mathrm{d}\theta-\displaystyle\int_{\frac\pi8}^{\frac\pi4}\left(\tan\dfrac\pi8-\tan\theta\right)\mathrm{d}\theta=-2h\left(\dfrac\pi8\right)+h\left(\dfrac\pi4\right)=\ln\dfrac{1/\sqrt2+1}2-\ln\dfrac1{\sqrt2}=\ln\dfrac{1+\sqrt2}2である。
また、f'(x)の符号を考えると、最大値はf(0)f(1)である。
0\leq\theta\leq\dfrac\pi4の範囲では、\tan\thetaは下に凸であるから\tan\theta\leq\dfrac4\pi\thetaである。この両辺を\thetaについて0から\dfrac\pi4まで積分してf(0)\leq\dfrac\pi8が得られる。ここで、(1)の\theta u平面における面積を考えるとf(0)+f(1)=\dfrac\pi4であるからf(0)\leq\dfrac\pi8\leq f(1)となる。したがって最大値は、
f(1)=\displaystyle\int_0^{\frac\pi4}\left(1-\tan\theta\right)\mathrm{d}\theta=\dfrac\pi4-h\left(\dfrac\pi4\right)=\dfrac\pi4-\dfrac12\ln2である。


(2)は素直に半角の公式でいいと思います。
(3)は必要なかったので0.69< \log2< 0.7であることを用いていません。