shaitan's blog

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ドイツ語入門(ドイツ語の発音の3原則①)

ドイツ語のお勉強は『本気で学ぶドイツ語』に沿って進めていこうかと思う。それによると、いずれの原則にも若干の例外はあるとしながらも、〈ドイツ語の発音の3原則〉として以下の3項目が挙げてある。*1

  1. ローマ字読み
  2. アクセントは第1音節(例外:外来語、アクセントのない前つづりのついている語など)
  3. アクセントのある母音のあとに子音が1つしかなければ長母音、それ以外は短母音(例外:chの前の母音など)

〈英語は…[略]…発音と正書法が極度に一致せず、アクセントの位置も、規則は存在するが、複雑で例外が多く、予測しがたい。…[略]…個々の語が独自のつづりを示すので、漢字に似て、単語の数ほど文字があるようなわずらわしさがつきまとう。〉*2 しかし、ドイツ語ではそのようなことはないらしい。*3

語頭アクセント

ゲルマン祖語において紀元前500年頃、「自由高低アクセント」(musikalischer Akzent)の「強さアクセント」(dynamischer Akzent)への移行とそれに伴うアクセントの語頭音節への固定化が起こった。*4〈この第一音節へのアクセント固定化は、Ántwort(答)> ántworten(答える)や Úrteil(判断)> úrtelisen(判断する)などのように接頭辞を添加した複合名詞およびそれからの派生語でも見られる。このことは、ゲルマン語のアクセント固定化が生じたときには、これらの複合名詞における接頭辞と基礎名詞がすでに強固に結びついていたことを示している。これに対して、erkénnen(認識する)> Erkénntnis(認識)やentstéhen(発生する)> Entstéhung(発生)のように、接頭辞を伴った複合動詞およびそれからの派生語では、アクセントは第一音節の接頭辞にはない。〉*5
〈アクセントの位置は、ゲルマン語・古高ドイツ語では、a)名詞では第一音節(ahd.bot (Gebot))、b)動詞では語幹(ahd. begán (begehen))が原則であった。しかしその後、規則の組み換えが生じ、現代ドイツ語では次のようになっている: a)接頭辞が完全母音を含む場合は、名詞・動詞とも第一音節(Úrlaub, áufstehen)、b)不完全母音の場合は語幹(Begríff, verstéhen)である。〉*6
まるまる引用したものの、完全/不完全母音の意味はよく分かっていない。full/reduced vowelってこと?

母音の長短

アメリカ英語では、長さのみによる母音の区別は事実上ないに等しい。短母音に分類されている母音もそれぞれで長さに違いがあり、殊に/æ/は長い。また、英語の母音に共通する特徴として、無声子音が後続する場合には、有声子音が後続する場合や語末の場合よりも長さが短くなる (pre-fortis) clipping(定訳なし)という現象がある。このため、有声子音の前の短母音は無声子音の前の長母音と同じくらいの長さかむしろ長めにさえなる。また、母音の長さはアクセントの程度によってさらに大きく変動する。〉*7
これに対し、〈ドイツ語の母音の長短は英語の場合よりも日本語の母音の長短(すなわち1拍と2拍)に似ていると考えられ、…[略]…日本人としては、[ː]の付いたドイツ語の長い母音は2拍のつもりで、短い母音は一拍[ママ]のつもりで発音することができ〉*8 るとのこと。

*1:滝田佳奈子『本気で学ぶドイツ語』ベレ出版 2010, S. 15.

*2:清水誠『ゲルマン語入門』三省堂 2012, S. 140.

*3:〈Die [regelgeleitete] Zuordnung von Lauten und Buchstaben soll es ermöglichen, jedes geschriebene Wort zu lesen und jedes gehörte Wort zu schreiben.〉(Deutsche Rechtschreibung, Vorwort 2 Grundlagen der deutschen Rechtschreibung

*4:荻野蔵平、齋藤治之『歴史言語学とドイツ語史』同学社 2015, S. 184.

*5:須澤通、井出万秀『ドイツ語史』郁文堂 2009, S. 33.

*6:荻野ほか a. a. O., S. 426.

*7:牧野武彦『日本人のための英語音声学レッスン』大修館書店 2005, S. 37f.

*8:神山孝夫『日欧比較音声学入門』鳳書房 1995, S. 240.